東日本大震災から2年を迎えるのに合わせて、全国の文学館で共同展示「文学と天災地変」が一斉に開催されます。全国文学館協議会の主催で、共通のテーマを掲げた展示は初の試みとのこと。北は旭川市井上靖記念館「井上靖『小磐梯』の世界展」から南は熊本近代文学館 「3・11に向けて ことばと記録」まで39館が一斉に特設コーナーなどで展示します。多くは3月1~31日の期間ですが、既に展示を始めているところ、3月中旬で終了するところ、6月まで展示するところなど様々です(同協議会ホームページ「hthttp://www.bungakukan.or.jp/kyougikai/index.htm」、チラシ=写真㊤「http://www.town.tsuwano.lg.jp/shisetsu/tirashi.pdf」参照)。
趣意文によると、「被災地の復旧、復興のめども立っていないといっても言い過ぎではないでしょう。......この企画展に展示される多くの作品によって、被災者の方々に対する私たちの心情をお伝えし、さらに私たちの文明を考える機会とし、未来を創造する契機とすることを願っているのです」という狙いだそうです。
このうち、被災県では、「郡山ゆかりの文学者が描く天災」(こおりやま文学の森資料館)「磐城七浜~豊穣と脅威の海」(いわき市立草野心平記念文学館)の2館が参加。まだ復興の道半ばということでしょう。その他のテーマをざっと眺めると、関東大震災や阪神・淡路大震災と作家や作品の関係を取り上げたものなどが目立ちます。
都内では田端文士村記念館(帰宅)、荒川区日暮里図書館、日本近代文学館(目黒区)、三鷹市山本有三記念館、武者小路実篤記念館(調布市)、吉川英治記念館(青梅市)が参加しています。
リストを眺めていると、好きな作家の記念館など盛りだくさん。鎌倉文学館や軽井沢高原文庫など、展示は別にしても、素晴らしい環境の中の古い建物などもありますから、もう少し暖かくなったら、行ってみたいですね。
さて、この中で、個人的な作家の好みと、近さから、日暮里図書館の吉村昭コーナー」の「吉村昭『海の壁』と『関東大震災』」を紹介します(6月19日まで、原則として月曜休館)。
吉村(1927~2006年)は日暮里に生まれ、1992年に荒川区区民栄誉賞が贈られたのを記念して「コーナー」が設けられたそうで、自筆原稿や草稿、愛用していた万年筆、眼鏡、サイン入り書籍、写真など寄贈された数多くの資料が常設展示されています=写真㊦、図書館ホームページより。
吉村が太宰治賞を受賞した『星への旅』(文藝春秋、1968年)の舞台が三陸海岸だった縁で、その後も岩手県田野畑村を幾度も訪れ、土地の人に津波の歴史を聞き、丹念な調査に基づき「海の壁」(中公新書、1970年、後に「三陸海岸大津波」に改題)を執筆。73年には「関東大震災」(文藝春秋、1973年、菊池寛賞)も著わしています。
今回は▽『海の壁』の書影▽『関東大震災』の原稿と講演会の直筆メモのパネル▽『大正大震災大火災』という書籍のパネル▽東日本大震災後に雑誌、新聞等で吉村が紹介された記事などを一覧できるパネルが見られるそうです。
日暮里図書館はJR、京成本線の日暮里駅から徒歩10分、竹橋から日暮里は電車を乗り継いでも30分前後。平日は午後7時半まで開館。