【2013年4月12日】のアーカイブ

 東京・竹橋のパレスサイドビルから歩いて約20分のところにある千鳥ヶ淵とその周辺には貴重な自然が残っており、ヘイケボタルも棲んでいることは一昨日のこの欄で紹介しましたが、そればかりでなく国指定の天然記念物もあるのです。都会のど真ん中に天然記念物? と思われるかも知れませんが、江戸城跡の石垣の間にヒカリゴケが自生しているのです。1969(昭和44)年に近所の人によって見つけられ、都心に生育することはきわめて珍しいとして1972(昭和47)年に指定されました。

 ヒカリゴケは暗い洞窟などの中でエメラルド色に光って見えますが、自力で発光するのではなく、胞子が発芽してできる原糸体の球状のレンズ状細胞が、わずかな光を反射することによって暗い所hikarigoke.pngで輝いているように見えるのです。環境の変化に敏感で、わずかな変化でも枯死してしまうそうです。環境省レッドデータブックの「近い将来における野生での絶滅の危険性が高い」絶滅危惧I類に分類されています。

日本では北海道から本州の中部以北の地域に分布しますが、生育地のほとんどは国立公園内なのです。千鳥ヶ淵の石垣のほか、長野県佐久市岩田村、埼玉県吉見町の吉見百穴の計3か所の自生地が国の天然記念物に指定されています。

千鳥ヶ淵を管理する環境省皇居外苑管理事務所によりますと、千鳥ヶ淵のヒカリゴケは江戸城築城の際に運ばれてきた石垣用の大きな石にコケ自体か胞子がついていて育ったのか、ヒカリゴケの胞子がどこからか運ばれてきて石垣の間で自生したのか、はたまたいつごろから生えていたのか全く不明だということです。しかし、このほど公開された同省の「千鳥ヶ淵環境再生プラン」では「石垣等の史跡とともに生きてきた生物を環境とともに保護していきます」と記されています。このヒカリゴケはまだ一般公開できるほど強く、多くはありませんが、うまく育てば呼び物の一つになるかもしれませんね。

で、「皇居周辺」「石」「コケ」と聞くとなんとなく「君が代」の最終フレーズを連想し、「むすまで」となるコケはこのヒカリゴケを指すのかと想像したくなりますが、これはまったく関係ないようです。でも、ヒカリゴケといいヘイケボタルといい、皇居の周りには他所ではほとんど見られない貴重な"光る自然"が残っているのですね。

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