ボタンを変えて、服装の印象を変える。シチュエーションに合わせて、ボタンをたくさん取り変える。帽子やカバンにアクセントとしてボタンを付ける。
ちょっとお洒落なテクニックですが、よく考えてみれば「昭和」の時代にはそれほどは珍しくありませんでした。ジャケットやスーツを売る洋服屋さんには、替えのボタンを売っているお店も少なくなかったものです。
お洒落のテクニックでなくても、昔はよく男の子の学生服のボタンは取れていました。取れるというよりもちぎれると言った方が正しいような取れ方です。同級生の女の子もなぜか針と糸をいつも持っていて、授業の休み時間に着けてくれたりしました。社会人になっても、ワイシャツのボタンは割と良く取れていました。クリーニング屋さんのプレスの関係もあったかもしれません。ワイシャツの裾に予備ボタンが付けられている時代もありましたが、このごろはボタンが取れるなどということは、なかなか経験しません。
ところが先日、ジャケットのボタンが少し欠けて、ボタン探しをしました。
パレスサイドビルまでの通勤は、メトロの竹橋駅まで日本橋乗り換えで浅草線を使っているのですが、自宅近くにはなかなかボタンを置いている店が見つかりません。そんなある日、JR大森駅から乗ったバスの車窓から小さなボタン専門店を見つけました。そこは、大森駅からそれほど離れていないウィロード山王商店街。慌ててバスを降りて引き返したのが、写真で紹介しているこのお店「みかね」です。広い東京、探せばボタン専門店はいくつもありそうですが、このお店、小さい店内の壁3面にぎっしりとボタンが並んでいました。聞くと壁の1面に2000個くらい。3面で6000個のボタンがあるそうです。店内800箱に詰まった6000個、ほかに自宅に2000個は保管していると言う店主は77歳のお元気な老婦人。「次回は服と一緒に来てください」と言われましたが、ピタリと合うボタンを選んでくれました。「趣味みたいなものだけど、役立つのならと、週に3日だけ店を開けているんですよ」と言う店主。どこにどんなボタンを収納しているか、もちろんすぐに分かるそうです。