【2012年12月14日】のアーカイブ

 竹橋・パレスサイドビルの毎日新聞のデータベースで戦前の紙面を眺めながら、前身の東京日日新聞と大阪毎日新聞の2・26事件(1936年=昭和11年)の報道ぶりを見ていますが、大事件があっても、それとは全く関係なく、フツーの事件も起きます。その報道ぶりはなかなか白いです。

 ちょっと驚いたのが、事件発生翌日2月27日の朝刊社会面=写真㊤。「非常警備下の帝都 お濠端一帯の異風景 宴・盛り場の灯は消え」など写真3枚使って大きく報じてはいますが、概ね上3分の1まで。あとは「買収された警官が選挙取締に手心」「電車と貨物自動車衝突五名死傷」などの事件事故に加え、「ふられた恋の恨み 美人女給を惨殺す」なんていう、今ならワードショーが飛びつきそうなネタがしっかり載っています。他にも「湖底に沈む村民にバラ撒く黄金 小河内貯水池」「少女(15)が胃癌で死亡 稀有の実例」「夏の列車の苦熱を一掃 まづ東海道特急に冷風装置」「七十婆さん南米へ 秋田の移民団」など、盛りだくさん。ちなみに列車の冷風装置は、最初は食堂車に限り、「物置、戸棚を改造して凍氷室を作り、相当強力な扇風機で凍氷面を撫で冷風を車内に送る」という"最新兵器"の由。

 ちょうど選抜中等学校野球大会(今のセンバツ高校野球)の出場校選考の時期で、「晴れの出場二十校決定 東日本のホープ早実、桐生中参戦」の活字も見られます(3月4日朝刊)。昨年、大震災でセンバツ実施すべきか否かが話題になったことを思い出します。「こんな時に」か「こんな時だからこそ」か、2・26に際しても同様の葛藤があったのでしょう。

独自の道を行くのが「家庭と趣味」のページ(今の家庭欄)=写真㊥。3月3日朝刊には「近頃喧(かまびす)しい若い男女の自由交際 どふ取扱ふのがよいか」との特集を組んで、3人の識者の見解を紹介しています。その顔ぶれが凄い。東京女子医大の前身の東京女子医学校創設者の医師、教育者の吉岡弥生が「絶対に反対 親達は厳重に監督せよ」、女性運動家で戦後は社会党代議士になる神近市子が「秘密をなくして朗らかに交際させたい」、そしてジャーナリストの菊池寛は「若い男女の自覚まだまだ足りない」と、今では考えられないテーマを大真面目に論じています。

 漫画特集も世相を反映していて結構いけます。当時、毎月第一月曜に「東日漫画」というページがあり、読者の投稿作品を数点ずつ載せていて、3月2日も休載しませんでした。その中で目を引いたのが「行ってお出で」という3コマ漫画で、お母さんが息子を見送る行き先が年取るとともに①中学②大学③職業紹介所と変遷するもの=写真㊦、中央下。なお、次月の4月6日の同ページには電燈会社の集金人になった男が「まさかおれがおれを督促しようとは」とぼやく漫画が載っています。これも就職難を映したものでしょう。

竹橋ガイド

calender

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

December 2012

category

カテゴリ

月別アーカイブ

月別 アーカイブ

eBook

  • 江戸城散歩2008年3月、毎日新聞掲載
  • 江戸城今昔ものがたり
  • 東京・竹橋 花図鑑
  • 東京・竹橋 続花図鑑
  • 東京・竹橋 新緑図鑑
  • 東京・竹橋 歴史絵巻 原始〜江戸時代初期
  • 東京・竹橋 歴史絵巻 江戸時代前期〜現代
  • 東京・竹橋 国際図鑑
  • 東京・竹橋 アカデミー図鑑
  • 東京・竹橋 文学散歩
  • 東京・竹橋 紅葉図鑑
  • 東京・竹橋 歳時記
  • 東京・竹橋 さくら図鑑