2014年12月に刊行された『高層建築が一番わかる』=写真㊦は表紙=にパレスサイドビルが紹介されました。
発行元は技術評論社、つまりかなりマニアックというか、専門的な技術本。同社は『・・・・が一番わかる』というタイトルで、様々な分野の技術を基礎から理解しようという解説本「しくみ図解シリーズ」を出していて、その最新刊というわけです。ちなみに、同シリーズは電気、通信・IT、運輸・交通、機械・工業など幅広いジャンルにわたり、うち、「建築・土木・インフラ関連」の分野では『耐震・制震・免震が一番わかる』『断熱・防湿・防音が一番・・・』などが刊行されています。
さて、本書の著者は、建築史家、建築評論家として知られる五十嵐太郎・東北大大学院工学研究科教授以下4人。「現代都市に必要不可欠な高層建築物」の多面的な側面を解説するというのがコンセプトとのこと。内容は、「第1章 高層建築物の基礎知識」に始まり、「第2章高層建築物のつくり方」「第4章 高層建築物が解体されるまで」など技術的、実務的なことが中心で、実例として実際の建物を取り上げたり、特徴ある建物をトピックス的に紹介したりしています。
パレスサイドビルが取り上げられているのは「第5章 高層建築物の存在意義」。六本木ヒルズ、横浜ランドマークタワー、あべのハルカス、霞が関ビル、東京タワー、東京スカイツリー、そして日本古来の木造高層建築である東大寺大仏殿、中東や中国の最近の超超高層ビルなど国内外の有名な建物を紹介しているのですが、そこに伍して、「高さ制限が生んだ名建築」とのタイトルでパレスサイドビルは2ページにわたって写真と図入りで解説されています=一番上の写真。
「・・・高さ制限から容積制へ移行期の名建築として知られ、・・・ずらして配置した2棟の水平に伸びる直方体のヴォリュームと、それらの端部に位置する2本の垂直に立つ白いシリンダー型のコアから構成されます。ガラスのはめ殺し窓に水平庇と竪樋(たてとい)と雨受けで構成されるメカニックなファサードは、環境の変化を刻々と映しだし豊かな表情を持ちます・・・」
さて、パレスサイドビルは「高層ビルじゃないだろう」と思っている方はいませんか? 実は、立派な(?)「高層ビル」なんです。当ブログ2013年6月7日の当ブログで、一度書きましたが、改めて解説します。
消防法第8条の2で「31メートルを超えるビル」を高層建築物といいます。これは概ね10階建て以上に相当しますが、パレスサイドビルは各階の天井が高いので、9階建て部分の高さが約37メートル、エレベーターの東西2本の白い円塔は50メートル余り。31メートル基準では「高層ビル」なのですね。ちなみに、31メートルは、はしご車が届く高さと考えられますが、1923(大正12)年2月に完成した旧「丸の内ビル」=写真㊧は1926年4月=の高さが100尺=31メートルで、1933年、皇居の周囲一帯が美観地区に指定された際、軒高は丸ビルが基準になり、また、丸ビルが完成半年後の関東大震災に耐えたことから、市街地建築物法(建築基準法の前身)で耐震性のために建造物の高さも31mに制限され、戦後も続いたとのことです。