【2014年5月22日】のアーカイブ

 大田区.jpg東京日日新聞(今の毎日新聞)をはじめ、当時の新聞がこぞって書きたてたとされたのが、石炭王・嘉納伝助(吉田鋼太郎)と葉山蓮子(仲間由紀恵)の豪華な結婚です。『金で買われたお姫様』という感じでしょうか、今で言うならむしろ週刊誌ネタです。高視聴率を続けているNHK連続テレビ小説「花子とアン」の主人公・安東はな(吉高由里子)の腹心の友の蓮子が遠く離れた九州の、しかも年齢の離れた石炭王に嫁いでいった先週のくだりですから、皆さんごご覧になったでしょう。

 「花子とアン」は実在の人物、翻訳家の村岡花子をモデルにした物語で、「赤毛のアン記念館」(村岡花子旧居)のある大田区は、『大田区「花子とアン」推進委員会事務局』を作ってPRなどにも努めています。「大田文化の森」(旧・大田区役所)では常設展示もされていますし、前々回の「大田区報」はタブロイド版のトップページ1ページを使って、松原区長と村岡美枝・恵理さん姉妹(村岡花子の孫)のスペシャル対談が掲載されていました。JR大森駅近くの商店街では、「赤毛のアンの翻訳家 村岡花子が暮らしたまち 大森」と朱書きされた幟があちこちに立てられています=写真㊤

 NHKの連続番組は地域の観光に役立つというか、その地域としてはそれをきっかけに観光をさらに盛り上げたいということなのですが、同じように福岡県飯塚市にある名所「旧伊藤伝右衛門(いとうでんえもん)邸」にも、飯塚市.jpg地元では注目が集まっています。そうです、ドラマの嘉納伝助もモデル実在で、裸一貫から身を立て、筑豊の「石炭王」にまで上り詰めた人物、伊藤伝右衛門がその人です。

 葉山蓮子のモデルとなった柳原白蓮(やなぎわらびゃくれん)が伝右衛門と結婚し暮らしたのがこの「旧伊藤伝右衛門邸」で、のちの「白蓮事件」で世間を騒がせた当時のビッグカップルの生活を物語る建築として、観光名所になっています。飯塚市では「ふたりを探す旅 花子と白蓮」をPRしています=写真㊥

 今も残っている旧宅の写真を見ればその豪華さは一目瞭然ですが、明治30年代に建てられたこの伊藤邸は、伝右衛門の人生の変遷そのもので、貧しい育ちであった幼少期から身を立て、経済的繁栄を手に入れ、柳原白蓮を嫁として迎え入れ......。そうした伝右衛門の人生の展開とともに次々と増改築を繰り返し、立派な庭園を持つ大邸宅へと変化していきました。

 白蓮が輿入れをした明治44年には3回目の大規模な増改築が行なわれ、それまで平屋造りだった邸宅に2階部分が作られ、その2階部分が白蓮の居室となりました=写真㊦食堂はテーブルを設置した洋間、窓ガラスはわざわざ取り寄せたドイツ製、トイレは当時の九州では見られなかった水洗トイレ(現在は飯塚市歴史資料館に保管、白蓮が希望した)が設置されるなど、栄華を極めた石炭王・伊藤家の「都会への対抗意識」も垣間見られます。

 伝右衛門と白蓮の結婚はそののち破綻するのですが、白蓮のことは歌人として九州の人たちは今も語り継ぎます。彼女のサロンが、九州の女流作家たちに与えた影響は小さくはありませんでした。

 伊藤邸②写真㊦.jpg広大な「旧伊藤伝右衛門邸」(福岡県飯塚市幸袋)は石炭遺産・文化遺産として、市民の保存運動により飯塚市の所有となり、2007年から一般公開が行なわれています。

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