アジサイ(紫陽花)といえば梅雨のころにうす紫やピンク、水色の花を咲かせ、しっとりした味わいが人気で、各地の紫陽花の名所はどこも大賑わいでした。もう花も落ちてしまって大きな葉っぱが目立っていますが、今咲き始めた紫陽花の仲間もあるのです。
タマアジサイ(玉紫陽花)。竹橋のパレスサイドビルすぐ南の皇居東御苑、富士見櫓近くの野鳥の島で数株が花を開いていました。小さな花のガクアジサイに似ていますが、つぼみはしっかりした苞(ほう)で包まれ、大きなまん丸の玉のようで、このつぼみの形からその名がついたそうです。つぼみからは「ぽん」という音とともに咲くのではないかと思われ、何か可愛い感じがします。
別名ギョクダンカ(玉段花)。江戸時代にはこの名前でよばれていたようで、タマアジサイは長崎に来た医師、シーボルトが名付けて初めて世界に公式発表された、という文献もあります。江戸時代にはこのほかギンバイソウ(銀梅草)とかサワフタギ(沢蓋木)と呼ばれていましたが、これらは現在、紫陽花とよく似た別の植物になっています。
ところで、「紫陽花」という漢字を使ったのは唐の詩人、白居易ですが、白居易は別の花に名づけていました。これを平安時代の学者、源順がこの漢字を誤ってアジサイに当てはめたことによって広まったといわれています。学名はHydrangea(ハイドランゲア)。ギリシャ語で「水の容器」という意味です。紫陽花が水を多く吸い上げることから付いたといわれていますが、アジサイの名は花の色と同様に少しずつ変わっているのですね。