この建築が、スゴい。傑作の見所を、プロが徹底解説!――。そんな惹句が帯に記された新潮新書の新刊『日本の近代建築ベスト50』(小川格著、定価880円=税込み)に、パレスサイドビルが登場します。「二棟のオフィスをずらし、コーナーにエレベーターやトイレを集めた円筒を挟んだ極めて異色のオフィスビル」と評しています。
ビル地階の新聞印刷工場、1階と地下1階の商店街、その両階を結ぶ網状構造の階段、広場として開放した屋上、大きなガラス窓、アルミ鋳物の日除け、一層ごとに切り離した雨樋......。長年にわたって専門誌・書籍の編集に携わった小川氏は「すべての部分が前例にとらわれずに、経済性と合理性に基づいて解決され、しかも明瞭に可視化された、わかりやすいビル」と指摘し、「林昌二という個性豊かな建築家が、組織事務所(注:日建設計)の技術力を駆使して成し遂げたオフィスビルの傑作」と絶賛しています。
また、「通常組織事務所はリスクを恐れて無難な解決に落ち着く傾向にあるが、林はあえて冒険を試みて成功させている」とも記し、林氏の逸話を紹介しています。興味がある方は本書をお読みください。ほかに本書で紹介しているのは国立西洋美術館、日本生命日比谷ビル・日生劇場、国立代々木競技場など。組織事務所の作品として唯一、パレスサイドビルを取り上げています。