東日本大震災で茨城県も大きな被害を受けた、と先日書きましたが、東北3県に比 べ、注目度が低いのが県関係者の悩みです。特に文化財。随分やられました。茨城県のホームページによると、震災による国指定等文化財の全国の物的被害 744件のうち茨城が182件(今年3月1日現在)と4分の1を占め、最も多いそうです。水戸市にある国指定特別史跡・重要文化財「旧弘道館」の漆くい壁 落下や国指定史跡「偕楽園」の地割れ多発などは知られますが、県北・北茨城市の五浦(いずら)海岸にあった「六角堂」が土台だけ残して丸ごと流されたのは 県民にショックでした。
六角堂は日本近代美術の基礎を築いた岡倉天心が設計して明治38(1905)年に建てられた赤い六角形の堂。東京美術学 校(現東京芸術大学)校長の職を辞した後、日本美術院を創設した天心は、大小の入江と松林が美しい景勝地・五浦に弟子の横山大観、下村観山らを呼び寄せ、 日本画の近代化を目指し美術活動を展開しました。彼らは六角堂で太平洋に上る陽を眺め、思索にふけったのでしょう。以前、近くのホテルに泊まり、入江越し に望んだ崖の上の優美な姿が忘れられません。
六角堂を保有・管理していた茨城大学が「復興基金」を設けたところ、短期間に約3800万円が集 まったとのこと(写真は募金を呼びかけるチラシ)。昨年11月着工、今月17日にいよいよ完成式を迎えます。創建当時の姿で復元しようと、瓦は愛知県、ガ ラスは英国からと、当時の製法で造ることができる所から取り寄せたといいます。震災からの復興目指して頑張る茨城の象徴となるでしょう。
パレスサイドビルがある都心から五浦海岸までは、上野へ出てJR常磐線特急「スーパーひたち号」で約1時間50分、大津港駅を降りて車で約10分程度。近くに茨城県天心記念五浦美術館もあります。