2014

17

10

回向院相撲⑥ 谷風の浮世絵

 竹橋から地下鉄を乗り継いで20分ほどの両国・回向院(墨田区両国2‐8‐10)の勧進相撲で活躍した江戸時代の名横綱、2代目谷風梶之助(1750~1795年)は、浮世絵の題材としても有名です。

 9月29日の当ブログで落語「佐野山」のことを書いた際に添えた浮世絵=㊧に●谷川・小野川・木村庄之助 勝川春章.jpg再掲=の作者は勝川春章(1726~1792年)。鳥居派(美人画や役者絵にすぐれ、元禄=1688~1704年=初めごろから世襲的に芝居の絵看板・絵本番付を描き、現代まで続いている浮世絵界唯一の流派)の類型から脱し、役者絵に個性的な描写の新様式を開いたとされ、力士や美人画も多く描きました。門下に葛飾北斎(勝川春朗)もいました。

春章に師事した浮世絵師の多くも谷風を描いています。

 一番㊤勝川春好(しゅんこう、1743 ~1812年)が谷風土俵入りの様子を描いた作品。彼は役者の半身像(大首絵)をさらにクローズアップさせたブロマイドのような「大顔絵」をシリーズで出したことで知られ、東洲斎写楽にも影響を与えたとされ▼力士谷風・滝の音 勝川春英.jpgます。春章、春好の谷風は、色白・切れ長の目で柔和という、伝えられる特徴通りで、よく似ていますネ。

 勝川春英(しゅんえい、1762~1819年)の谷風=㊨=は、無精ひげをはやしていて、ちょっと趣が異なります。彼は明るく飄逸(ひょういつ)な作風だそうで、確かに、ちょっとユーモラスな感じもします。役者絵では師の春章の亡き後を継いで高い評価を得ているとか。春章門下では春好とライバル関係だったようです。

 もう一人、勝川春潮(しゅんちょう、生没年不詳)は春章の弟子でありながら、ライバルの鳥居派の画風を模した美人錦絵を多数発表する一方、並行して手懸けた肉筆美人画では春章風を忠実に守ったといい、版画と肉▼谷風となには屋おきた 勝川春潮.jpg筆画で二通りの画風を器用に使い分けた異色の絵師です。の絵は春章、春好より春英に近いというか、目がそっくりです。谷風の隣に描かれているのは、当時、有名な水茶屋(道ばたや社寺の境内で茶などを供して休息させた茶屋)の娘、なにわ屋おきたです。絵に描いたような(っていうか、絵なんですけど)美人です。

 最後に写楽の谷風も1枚、というか3枚組。「大童山土俵入り」=㊦=で、左側の絵(西方)の後列左が谷風(右隣りは雷電)。ちなみに中央の大童山文五郎は生まれながらの巨体で、最高位は西前頭5枚目ながら、幼少のころから怪童として知られ(大人になっての体格は159センチ、169キロ)、見世物としての土俵入りが人気で、写楽はこれを含め大童山を4点描いているそうです。

▼大童山土俵入 写楽.jpg

竹橋ガイド

calender

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

March 2024

category

カテゴリ

月別アーカイブ

月別 アーカイブ

eBook

  • 江戸城散歩2008年3月、毎日新聞掲載
  • 江戸城今昔ものがたり
  • 東京・竹橋 花図鑑
  • 東京・竹橋 続花図鑑
  • 東京・竹橋 新緑図鑑
  • 東京・竹橋 歴史絵巻 原始〜江戸時代初期
  • 東京・竹橋 歴史絵巻 江戸時代前期〜現代
  • 東京・竹橋 国際図鑑
  • 東京・竹橋 アカデミー図鑑
  • 東京・竹橋 文学散歩
  • 東京・竹橋 紅葉図鑑
  • 東京・竹橋 歳時記
  • 東京・竹橋 さくら図鑑