聞きしに勝る、の一言です。
パティシエ横溝春雄(よこみぞ・はるお)さんの「ウィーン菓子工房 リリエンベルグ」(川崎市麻生区上麻生)の話です。ドイツ語で「ユリの丘」の意味の店名の通り、小田急線・新百合ヶ丘駅(竹橋など都心から1時間足らず)で降りて徒歩15分・バス5分の住宅街ににあります。少し前、神奈川方面へのドライブの帰りに寄りましたが、この一帯は川崎市の肝いりで副都心として開発され、特に店のある山口台はビバリーヒルズのような豪邸が軒を連ねて、ガレージにはBMWやベンツという風情で、ご婦人方は「シンユリネーゼ」とも呼ばれる由。
お菓子のことは後で書くとして、まずお店の外観です。行ったのは日没直後くらいで、イルミネーションに包まれたメルヘンチックなデザインに、いきなり心臓を鷲掴みにされます=写真㊤。屋根には草木が茂っているのが分かりますか? お店に入る前からワクワクさせるなんて、やりますね。
前の通りの車の行列は平日の昼にもみられるそうで、常時2人の警備員さんが懸命に誘導。同乗の家族は先に降りて店へ。駐車できるまでの15分ほどの間、訪れるお客さんがほとんど途切れません。
店内にはショーケースに沿って十数人の列=写真㊧。店外に溢れている人もいます。家族は注文を終えて待っているところでしたが、ホームページ(http://www.lilienberg.jp/1home.html)で目星をつけていた当店の定番、ウィーンの代表的お菓子「ザッハトルテ」も、農家直送の「女峰いちご」を使ったショートケーキも売り切れで、 なんとか季節限定の特製モンブラン、ショートケー
キの代わりにぶどうのケーキ、それにミルフィーユのようなケーキをゲットしました=写真㊨(他に焼き菓子も少々購入)。ケーキは概ね400円前後で大きさも普通サイズ。驚くほど高くてサイズも小さい某有名店に比べて極めてリーズナブルです。
ただし、モンブランだけは季節限定品ということで600円。でも、その価値がありました。中身は生クリームと栗丸々1個のシロップ煮=写真㊧㊦。 栗は収穫したその日のうちにシロップ煮とマロンペーストに下ごしらえするそうで、甘すぎず、しっとり。生クリームは、ふんわり、控えめの甘さが絶妙です。バニラエッセンスや洋酒などで香りを付けるモンブランが多い中で、ここはそれらを一切入れないとか。新鮮な栗そのものの素材の味で十分、っていうことですね。ダックワーズ(焼き菓子)の生地もすーっとフォークが入ります。食べると、幸せな気分になりました。残念ながら今年の販売は11月11日に終了。一番おいしい時に食べてもらうことをモットーにしているからとのこと。来年の秋をお楽しみに。
また、お菓子とお茶をいただける素敵なティーハウスが併設されていますが、クリスマスの準備で11、12月はお休み。う~ん、残念。
横溝さんはオーストリア・ウィーンの老舗洋菓子店「デメル」で日本人として初めて修業を許された方。帰国後、有名店のシェフを務めた後、1988年に「リリエンベルグ」をオープンしました。「テレビチャンピオン・パティシエ選手権」2連覇、漫画「美味しんぼ」44巻に登場等々、知る人ぞ知る実力派。日経新聞Web版でスイーツの専門家らが食べ比べて、極上の商品だけを星付きで紹介する「今週の3つ星スイーツ」(2010年3月スタート)で、通算して星を最も多く獲得。そのインタビューで、新しく出店しないのかと問われ、「事業拡大には興味がない。一番大切なのは一緒に働く人々の輪。店舗数を増やしたら、それができなくなってしまう・・・それに、年中無休の百貨店に出店したら、できたてをすぐ届けるという自分たちの信念を貫き通せなくなる可能性もある」と語っています。
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