2013

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8

『終戦のエンペラー』......★★★★★!!

 話題の映画『終戦のエンペラー』を見ました。1945年8月30日、連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)司令官としてダグラス・マッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)が厚木に降り立った1945年8月30日から米大使館で元帥が天皇と会見した9月27日までの約1カ月間を刻々と追い、元帥から、太平洋戦争の責任者追及を命じられた部下ボナー・フェラーズ(マシュー・フォックス)が、「天皇の戦争責任」をめぐる昭和史の謎に迫る歴史サスペンスという触れ込みです。

 原作は、元毎日新聞記者、岡本嗣郎のノンフィクション『陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ』(文庫化にあたり『終戦のエンペラー』と改題)。まあ、天皇の戦争責任という重いテーマですから、人により考え方はいろいろでしょうが、映画の中でもフェラーズが「1000年調べてもわからない」と語っているように、真相を解き明かすというより、一つの見方をエンターテインメントとしてうまく見せた作品ということでしょうか・・・。

 この季節、毎年、戦争をテーマにした映画が封切られています。真珠湾奇襲を描いた『トラ・ト ラ・トラ!』(1970年)など、戦闘シーンが売りと思える作品も少なくありませんが、『日本のいちばん長い日』(1967年、ポツダム宣言受諾決定から玉音放送に至る1日を描く)、戦争末期の硫黄島を題材にした『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』(2006年)という米国映画もありました。戦闘シーンがない米国映画という今回の作品は、二重の意味でこれまでと異質とかもしれません。

 新聞その他で、いろいろ取り上げられていますが、ちょっと面白いと思った話を2つ紹介。

 一つはロケ。撮影は、基本的にニュージーランドのオークランド市に再現したセットで行われ、監督ピーター・ウェーバーはインタビューなどで、「真実味のある1932年のアメリカ、1940年と1945年の日本、その当時の世界を作り上げた」と自賛しているように、東京の第一生命ビル6階のマッカーサー執務室(現在も保存されている)をはじめ、アメリカ大使館、天皇が一時期仮の住まいとした防空壕、マッカーサーが搭乗していたC54輸送機の機内なども精巧に再現されています。

 ただ、日本ロケも少しだけありました。それが皇居。監督が「撮影終戦のエンペラー1.jpg許可を取るのに、日本人プロデューサーたちが頑張ってくれたよ。今まで誰も、皇居敷地内での撮影を許されたことはないから、僕たちが初めてになる」と語っています。といっても、皇居の前で撮った程度のようで、フェラーズを演じたフォックスはインタビューで、「規制もすごかった。何も食べられないし、たばこも吸えない。限られた時間しか与えられなかったし、常に監視されていた」とぼやいた後、「でも、とても神聖な場所にいる感覚を覚えたよ」と話しています。終戦のエンペラー本物.JPG

 もう一つが、クライマックスの天皇とマッカーサーの会見場面(写真㊨㊤が映画、㊨㊦が本物)。奈良橋陽子プロデューサーが雑誌などで語っているところでは、天皇を演じた歌舞伎の片岡孝太郎と、マッカーサー役のジョーンズは、そのシーン撮影本番の時が初対面だったというのです。事前に挨拶したいと言うのを、あえて止めたとか。そう思って見ると、なるほど、だからこその漂う緊張感、ってことですネ。

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