くまモンもここまで人気が出れば、なぜ受けるのか、分析も盛んです。
公式記録とも言うべきは、「くまモンの秘密 地方公務員集団が起こしたサプライズ」(幻冬舎新書)でしょう。それによると、くまモンは九州新幹線全線開業を前に誕生。特に、直結することになる大阪でのPRに全力を挙げ、身元不明のキャラクターがそこかしこに出現する都市伝説のような話題作りを目指して「神出鬼没大作戦」を展開。1万枚の名刺配布、ブログとツイッター開設、果ては吉本新喜劇にも出演。「ゆるキャラグランプリ」優勝・・・と"出世"していきます(写真は今年3月17日の誕生祭で新イメージソングを歌う森高千里さんらと)。
マスコミも人気の"謎解き合戦"に参戦。毎日新聞・大阪本社版に、外部の専門家が様々なテーマで論を展開する「論ステーション」というコーナーがあり、その5月17日付で「ゆるキャラが止まらない」として3人の識者が発言しています。このうち、大阪ガスエネルギー・文化研究所主席研究員の豊田尚吾さんは、商業的キャラクターはよく練られた性格やストーリーが初めから付与されているのに対し、ゆるキャラは見る人の声に応えて新たな性格などを付け加えるなど、「見る側が関与できることが身近な存在に感じさせている」と分析しています(http://mainichi.jp/area/news/20130517ddn004070055000c.html)。
ブログまとめサイト「BLOGOS」上でも、メディア研究者の新井克弥・関東学院大教授が3回に分けて分析しています。こちらは、似た視点ですが、かなり辛口。曰く「くまモンは、ゆるキャラではない!」。長文なので、詳しくはサイト(初回=http://blogos.com/article/51024/)でお読みいただくとして、かいつまんで書くと次のような内容です。
まず、「ゆるキャラ」を「キャラクターとしての設定やコンセプトの詰めが甘い」と定義。くまモンも、ゆるキャラの基本である詰めの甘さとダサさをしっかりと踏襲しているように見えるが、「騙されてはいけない。これは周到に組まれたコンセプトと僕は考えている」と喝破します。くまモンのコンセプトのアドバイザーは脚本家の小山薫堂、デザイナーは水野学という、広告の世界では知る人ぞ知る超大物で、巧妙な仕掛けがあるというのです。コンセプトを徹底的に煮詰めた後に、それがわからないようにわざとダサくする、つまり「コンセプトがゆるいように見せる」という手法を用いているもので、これを新井教授は「ダサイジング」(わざとダサくする手法)と名付けています。
具体的には、第1に「鉄腕アトム」=心やさしい科学の子といった「性格付け・物語性の欠如」。第2は、瞳孔が開いているようで、何を見つめているのかよくわからない「視線の喪失」という2つのコンセプト挙げます。つまり、見る者に何らかの訴えかけをしてこない=「押しつけがましくない」という「読み込み自由」なキャラクターで、これは1990年代後半以降のトレンドなんだとか。
6月5日の当ブログでふなっしーの人気を考える中で紹介した、「完璧なマーケティングによって生み出された」キャラという分析に通じますね。
経済効果など「ビジネス」としては空前の成功物語を継続中のくまモンですが、なんか、乗せられてるようで釈然としない感じもします。くまモンファンのみなさん、天の邪鬼でごめんなさい。