東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開かれている「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」展(毎日新聞社など主催)も21日まで。まだ見ていない方はお急ぎを。
さて、主人公のネロがルーベンスの絵にあこがれた「フランダースの犬」ですが、アメリカでも5、6回映画化(アニメでなく実写版)されていますが、ネロが生き続けるんですって。ホンマでっか?!
このうち、昨日の当ブログでもちょっと紹介した1998年の「A dog of Flanders」(ケビン・ブロディ監督)=写真㊤はDVDのジャケット=を何年か前にテレビでやっていて、子供のために録画したままだったので、改めて見てみました。
概ね、日本のアニメと同じようにストーリーが進み、クリスマスイブの大聖堂のシーンでルーベンス(の亡霊)が登場し、「君(ネロ)の絵は長くみんなの心を揺さぶるよ」と語り、ネロとパトラッシュを天国に導き、そこで幼くして死に別れた母親と抱き合って終わります。最後のルーベンスの言葉に「芸術は永遠」というメッセージが込められているのだろうと理解しましたが、あっけない終わり方だな、という印象も持ちました(DVDの結末は確認していません)。
ところがです。Youtubeでみつけた映像は、このあと、テレビで見たものにはなかったネロの葬式の場面=写真㊦①=になり、みんなが悲しんでいるのを天国でネロ、おじいさん、母親、ルーベンスが見ていて=写真㊦②=、ネロが「僕、生きたい」と言います。ルーベンスは、みんなに愛されていることを理解させるため、ネロを一時的に天国に連れて行って葬儀を見させたというわけです。続いて大聖堂で倒れた場面に戻り、アロアらが駆け寄って抱き起こすと、ネロが目を覚ます=写真㊦③=という"復活"の物語。しかも、ネロの才能を認めて応援していた画家が、実はネロの父親だとわかり、「マイ・サン」と抱きしめるではありませんか=写真㊦④=(http://www.youtube.com/watch?v=t1QxxAyg5hs)。驚きました。日本では悲劇と決まっているので、テレビでは最後がカットされたってことですね。
映画が作られた当時、日本の新聞では「ハッピーエンドは改悪」「結末変更にファン抗議」「作者の主張尊重を」などと報じられ、毎日新聞の1998年10月19日夕刊社会面に「ネロ少年、死なせない」というブリュッセル発の時事通信社電が載っていて、記事の中でブロディ監督が「小説ではネロは最後に死ぬが、米国ではそのままでは売れない」とコメントするなど、結構、物議を醸したようです。
このほか、1935年の作品(エドワード・スローマン監督)についても、あるブログで紹介されていて、登場人物の名前が変わっている上、ストーリーは、祖父の死に打ちひしがれるネロを支えてほしいとマリヤ(アロア)から頼まれたピーター(原作やアニメで誰に当たるか不明)が、ネロの絵を見て才能に驚愕、絵を売ってもらい、自分の作品としてコンクールに出品して一等賞を獲得。やがてネロが真の作者だと判明し、高名な批評家がネロの将来を約束したことから、コーゲス(アロアの父ゴゼツ)はマリヤとネロの交際を許す――という分かりやすいハッピーエンド(http://ameblo.jp/wa500/entry-11019872395.html)。
アメリカンドリームの国で、"負け犬" じゃ、お話にならないってことでしょうか。いやはや、何とも。