2013

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一生分のルーベンスを見た気分

 週末、ルーベンスを見てきました。東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで4月21日(日)まで開催中の「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」展(毎日新聞社など主催)です=写真㊤は会場入り口付近。6カ国から集めた84点とは、よくも集めたもの。一生分のルーベンスを見た気分です。

 17世紀バロック絵画を代表する画家ペーテル・パウル・ルーベンス(1577~1640年)は、フランダース(現ベルギー北部)のアントワープに育ち、23歳から8年間、イタリアで宮廷画家を務めた後、帰国してアントワープに工房を構え、「マリー・ド・メディシスの生涯」(ルーブル美術館蔵)など大作を次々と手がけました。1620年代からは外交官として、スペインとオランダの和平交渉にもあたったのも有名です。

 今回の目玉は自画像、そしてオオカミに育てられた双子の兄弟を描いた「ロムルスとレムスの発見」=写真㊦のチラシの絵=など(ロムルスとレムスは古代ローマを建国したとされています)。これら油彩のほとんどが本邦初公開だそうです。

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 展示は、イタリア時代もさることながら、アントワープ工房の活動に焦点を当てていて、特に彼が直接指導して制作させた版画も目を引きます。画家と言うと、孤独な求道者というイメージを持ってしまいますが、ルーべンスは、ちょっと違うようですね。

 毎日新聞の特集記事などによると、当時、工房はヨーロッパで画家になるための入り口。授業料を払って技術を習得し、その後、助手として親方に雇われ、指示に従って絵を描くという仕組み。ルーベンスの工房が際立っていたのは、大作を引き受けるためにシステマチックにした点で、ルーベンスが小さな油彩スケッチを描き、依頼主のOKを得たら、その手本をもとに工房の助手が大画面に描き、最後にルーベンスが加筆して完成させたといいます。彼の工房は助手が少なくとも25人いた大所帯だったそうです(助手から独立した画家では、イングランドの上流階級の肖像画で知られるアンソニー・ヴァン・ダイクが出世頭か)。

 そんな工房の仕事ぶりがうかがえる展示があります。同じような版画が複数あり、ここの髪のボリュームをもっと膨らませ、こちらの体の影をもっと濃く、というように書き込みがあり、その通りに直した作品と比較できて面白いです。

 もう一つ、宗教画が中心だった中で、花が得意のブリューゲル、動物を得意としたスネイデルス、風景画のウィルデンスら、特定分野を上手に描く「専門画家」が登場し始めていたといい、ルーベンスは彼らとの共同制作にトライしています。例えばスネイデルスと共同で描いた「熊狩り」なども見どころですね。

 4月21日まで期間中無休。当日券は大人1500円、大高生1000円、中小生700円。その後、28日~6月16日・北九州市立美術館、6月29日~8月11日・新潟県立近代美術館でも開催。主要展示作品の画像や解説が主催者ページ(http://rubens2013.jp/index.html)でみられます。

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