2012

25

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あすは柿の日。柿食えば 鐘が鳴るなり 東大寺?

 あす1026日は「柿の日」。全国果樹研究連合会カキ部会が、有名な正岡子規の俳句「柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺」にちなんでこの日に制定したそうです。しかし、この句を詠んだのは法隆寺ではなくて本当は東大寺である、という説があります。

 パレスサイドビルが建っている所のすぐ近く、外神田錦町にかつてあった第一高等中学校寄宿舎に一時住んでいたことのある正岡子規についての書物や研究は数えきれないほどあり、多くは記しませんが、病気療養のため郷里の松山市に戻っていた正岡子規は、友人であった夏目漱石に借金をして東京の自宅に戻る途中、病気を押してかねてから熱望していた奈良地方の旅行をしたのです。奈良に着いたのが1895(明治28)年の1026日だったのです。この日は、東大寺近くの宿に泊まり、御所柿を食べながら鐘の音を聞いたのです。子規が雑誌「ホトヽギス」に載せた「くだもの」(明治3434月)の中の「御所柿を食ひし事」では次のように記されています。

「夕飯を過ぎて後、宿屋の下女にまだ御所柿は食えまいかといふと、もうありますといふ。余は國(くに)を出てから、十年程の間御所柿を食った事がないので非常に戀(こい)しかったから、早速澤山持て来いと命じた。やがて下女は直徑一尺五寸(約45㎝)もありそうな錦手の大丼鉢に山の如く柿を盛てきた。流石柿好きの余も驚いた。それから下女は余の為に庖刀を取て柿をむいてくれる様子である。(中略)やがて柿はむけた。余はそれを食ふてゐると彼は更に他の柿をむいてゐる。柿も旨い。場所もいい。余はうつとりとしているとボーンといふ釣鐘の音が一つ聞こえた。彼女は、オヤ初夜(そや)が鳴るといふて尚柿をむきつゞけてゐる。(中略)あれはどこの鐘かと聞くと、東大寺の大釣鐘が初夜を打つのであるといふ。...略」。

また、奈良の旅行で法隆寺を訪れたのは1028日で、この日は雨が降っていたということなどから「東大寺」という説が出てきたのでしょう。全国果樹研究連合会も、この説を有力だとして26日を柿の日にしたのかもしれません。

ただ、子規の自筆俳句全集「寒山落木」巻四では、「法隆寺の茶店に憩ひて」とあってこの句と「垣ごしに 渋柿垂るる 隣かな」の2句が書かれています。すでに慣れてしまったからかもしれませんが、この句の柿を食うイメージとしては東大寺より、もっと古い法隆寺の方がふさわしい気もします。

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