世の中、ミャンマー(ビルマ)がブームだそうです。といっても、主に経済界のこと。長い軍事独裁から民主化に舵を切り、急速な経済開放・開発が見込まれるこの国に、日本企業が熱い視線を送っているわけです。労働コストは東南アジア諸国連合(ASEAN)の中で最も低くて、一般の労働者の賃金は月額52ドルといいます。中国の462ドルはもちろん、ベトナムの152ドル、カンボジアの125ドルと比べても格段に低く、中国の人件費上昇→ベトナムに製造拠点移転という流れの先、「ポスト・ベトナム」という声もかかっている人気です。国民の識字率が比較的高いこと、旧英国植民地で英語がそれなりに通じるのも高評価。5000万人近い人口は、将来的な市場としても魅力です。
ただ、経済一辺倒で行っていいのかなぁ。なにかと世情騒然の折柄、実利は大事だけど、もっとその国の文化や国民性、生活なんかも知らないと、まずいんじゃないか、と思うわけです。まして、ミャンマーでは政権と少数民族との間の紛争が完全に終結していないという難しい問題も抱えています。
ということで、パレスサイドビルから徒歩5分、区立千代田図書館(千代田区九段南1-2-1、区役所9階)で開催中の「未来への遺産、ミャンマーの森と人びと」と題したミニ展示を見てきました=写真㊤は同展のチラシ。ミャンマーの広大な森の奥では、半野生の使役ゾウが木材を運搬し人間と共に働く東南アジアでも珍しい林業の形態が残り、少数民族の人々が質素ながら森の恵みを得て豊かな暮らしを営んでいる――そんな多様で豊穣な姿を紹介したものです。写真集『ゾウと巡る季節』『ダイドー・ブガ』(いずれも彩流社刊)からセレクトした写真パネルのほか、森の人々が使う鮮やかな服や日用品、器用に作られた道具やおもちゃなどが展示されています=写真㊦、同図書館ホームページから。森と人々の共生というミャンマーの伝統的な姿は、いろいろと考えさせられます。
10月27日まで(9月23日は休館)。関連イベントとして、10月12日(金)19:00~、「ミャンマー(ビルマ)はどうなるのか――日本との関係から考える」と題し、ジャーナリストの吉田敏浩さん、上智大教授の根本敬さんによる講演もあります。定員25人(参加無料、当日先着順)。