竹橋・パレスサイドビルのすぐ前にある皇居・東御苑本丸南側の果樹古品種園は、春の終わりころからバリアフリーのための整備を行っていましたが、7月末に完了し、今では芝生も生えそろってきれいな一画となっています。
現在の果物は品種改良されて古い品種はすたれてしまい、その多くは一般には見ることができなくなりました。江戸時代の品種を東御苑に植えれば訪れる人々にも興味深いのではないか、との天皇陛下の考えで、平成19年度から20年度にかけて造園されたものです。
植えられているのはナシ類が新潟県原産とされる「淡雪」、高知県原産とされる「今村秋」など5品種▽モモ・スモモ類では大正時代に石川県で収集されたという「薬缶(やかん)」、鹿児島県の古い品種とされる「万左衛門」など4品種▽カンキツ類でインドヒマラヤに源を発する「臭橙(カブス)」、インドシナ半島原産で温州ミカンによく似た果実の「九年母(クネンボ)」など5品種▽カキ類では神奈川県原産で、都築郡柿生村王禅寺(現在の川崎市)で偶然発見されたとされる「禅寺丸」、完全渋柿でやや晩生の「祇園坊」など5品種、そして長野県飯綱町高坂地区周辺に古くから伝わる「高坂リンゴ」などワリンゴ3品種......計22品種です。
同園に移植されてから早いものでは5年が経過し、昨年ごろから実を付けたものも。今年も小さい実がなっている果樹も見られます。ところがなかなか完熟した果実は見られません。というのも実が大きくなる前にカラスに食べられてしまうからなのです。宮内庁では「皆さんに果実を見てもらいたいので、果樹園のように袋をかぶせるわけにも...」と、頭を抱えているそうです。