「日本のロダン」と称された彫刻家、朝倉文夫(1883~1964年)の話の続きです。
朝倉のアトリエ兼自宅だった「朝倉文夫彫塑館」(台東区谷中7丁目)の耐震補強などのための保存修復工事が、着々と進んでいます=写真㊤は完成予想図、台東区ホームページより。
2001年に国の登録有形文化財に指定された建物は、朝倉自ら設計・監督をして増改築を何回も重ねたもので、RC構造によるアトリエ棟の西洋建築と、竹をモチーフとした数寄屋造りの日本建築で構成され、異質の西洋建築と和風建築が見事に調和。アトリエの天井は高さ8.5m、3階部分まで吹き抜けになっていて、床下7.3mに電動の昇降制作台も格納されています。1967年、故人の遺志として公開され、86年に台東区に移管されました。
アトリエと和室に囲まれた中庭は「五典の水庭」と呼ばれ、儒教の五常の教え(5つの徳目)を造形化した「仁」「義」「礼「智」「信」と名付けた五つの巨石が巧みに配されています。アトリエ棟屋上では、朝倉が彫塑塾を開いて後進を指導していた時代、園芸の授業のため野菜を栽培していたとか。この中庭と屋上庭園が2008年に「旧朝倉文夫氏庭園」として国の名勝に指定されました。その解説文には、次のようにあります。
「文夫は、芸術を『自然と人生との象徴形』と捉え、......『庭』との一体感に配慮した独特の空間意匠と造形を追求した。......文夫の芸術思想の特質である自然観をよく表し、狭隘な空間に濃密に展開する庭園の芸術上・観賞上の価値は高く重要である。」
こんな"芸術作品"の改修ですから、さぞ大変でしょう。台東区のホームページに「保存修復工事の状況について」のコーナーが設けられ、(http://www.city.taito.lg.jp/index/bunka_kanko/bunkashisetsu/
asakurachosokan_koji/index.html)進捗状況が時系列で写真付きで紹介されています。元通りに戻すため、床板の1枚1枚に番号をふり、瓦は極力再利用して損傷が激しいところだけ新しいものに取り換え、土壁を取り除いて耐震壁を取り付け......。足場設営のため千葉県に一時避難させていた庭の樹木が、足場を外した後に再移植された様子もホームページで確認できます=写真㊦。無事、再び根付いてくれるといいですね。
竹橋から彫塑館へは、地下鉄で大手町、JRまで歩いて山手線で日暮里へ。そこから徒歩3分。再オープンは来年春の予定です。