ちょっと前ですが、パレスサイドビルに珍しいお客さんがみえました。
な~んでしょ? 3月28日(土)の朝9時55分ごろに発見。場所はビル北西の出入口の脇、高速道路下です。写真㊤のガラス窓は北口出入口の警備員が詰めている部屋。その前のレンガの壁の上を歩く姿です。
「タヌキか」――ビルの警備員はそう思って、とにかくカメラのシャッターを切ったそうです。けっこる、上手に撮れていますね。近くのちょっとくぼんだ所にも入ったりしていたそうです=写真㊨。人間にきがいが及ぶような事態を防ぐべく、警備員がやや離れて警戒していましたが、10時20分ごろ、高速道路下の区道を横切り、NTT一ツ橋ビル・住友商事竹橋ビルの方に姿を消したということです。
さて、この珍客の表遺体は何でしょう。「東京タヌキ探検隊」(http://tokyotanuki.jp/comparison.htm)というサイトによると、タヌキはア ライグマ、ハクビシン、ニホンアナグマなどと似ているようです。珍客をサイトのイラストと比べると、アライグマ、ニホンアナグマはだいぶ違うので、タヌキとハクビシンを比べてみました=写真㊧㊤と㊦。どうですか? おなかの太り加減、なにより尻尾がとんがってるか丸くなっているかを見ると、たぶんハクビシンですね。ちなみに、タヌキはネコ目イヌ科タヌキ属、ハクビシンはネコ目ジャコウネコ科。どちらも基本的に夜行性で、昼間は巣穴などで休憩していることが多いそうです。今回は寝ぼけて出てきたのでしょうか。
どこから来たのでしょうか。やはり皇居でしょう、きっと。
「皇居内に移入されたハクビシンとタヌキについて」(遠藤秀紀・東京大学総合研究博物館教授ほか)という論文に、次のような要約が出ていました。(2000年、もとは英語の論文ようで、日本語の要約がネット上で読めます=http://ci.nii.ac.jp/els/110004313491.pdf?id=ART0006482129&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1428909336&cp=)
「皇居におけるハクビシンとタヌキの人為的定着が推測されるため、宮内庁庭園課および皇宮警察より聞き取り調査を行い、糞の収集と分析を進めた。また、都心部でのハクビシン捕獲例を検討した、過去およそ2年半にわたり、皇居内の広い範囲で、両種の目視情報が多数確認された。ハクビシンに関しては,目視情報は確実な写真証拠を含み,また皇居に隣接する千代田区の市街地においても2頭の捕獲例があった。糞分析では,内容物に大量の植物繊維とカキの種子を含むため、目視がイヌを誤認していることを否定できるとともに,ハクビシンやタヌキが生息する可能性が示唆された。糞便の直接法および浮遊法鏡検により、オーシストおよび虫卵は確認されず、寄生虫感染は証明されなかった。なおタヌキに関しては、目視情報以上に確度の高いフィールドサインは得られなかった、以上の結果は、ハクビシンが皇居内に生活することを確実に証明している。またタヌキの定住に関しても可能性を示唆しているといえよう。なお両種の場合、皇居での定住は、伴侶動物として都心へ人為的に移入・放獣されたことに起因すると推察される」
ハキビシンが皇居に生息するのは間違いなさそうですから、きっと、その1頭がでてきちゃったんでしょうね。
ちなみに、この論文は「人為的定着が推測される」と書いていますから、ペットとして飼われていたものが繁殖したという見立てでしょう。ただ、いつごろから住みだしたのかは、他の記録を見ても不明のようで、誰かが持ち込んだのか、逃げて定住したか、近郊からいつしか自然に移り住んだのか、確定的な記録はないみたいですね。
いずれにせよ、このハクビシン、怖かったでしょうね。その時の心中を想像すると、心から同情せずにはいられません。無事、巣に戻れましたようにと、祈るばかりです。