【2015年3月17日】のアーカイブ

 毎日新聞の朝刊一面コラム「余録」を23年2カ月にわたって6354本執筆した諏諏訪 写真.jpg訪正人(すわ・まさと)さん=写真㊧=が2月8日に亡くなりました。享年84。新潮社の季刊誌「考える人」の河野通和編集長が週刊メルマガ(2月26日発行・624号)のコラムで、その諏訪さんを追悼する文章を書いていて、パレスサイドビルの鳩の彫刻にまつわる話を取り上げた「余録」を紹介しています=写真㊤。(http://www.shinchosha.co.jp/kangaeruhito/mailmag_html/624.html

 鳩はビルの9階の庇に計6羽。これを諏訪さんが書いたのは1984年10月14日、新聞週間スタート前日の「余録」です(末尾の写真がその紙面)。毎日新聞が1966年にパレスサイドビルに移転する前、有楽町に本社があった時代には、新聞各社は通信管をつけて、原稿やフィルムを運ぶために伝書鳩を飼っていました。諏訪さんは、それが東京五輪(1964年)を最後に、役割を終えたことを紹介し、鳩の彫刻について「永田町方面を見ているハトもいる。タカを警戒しているのか」と、サラっと書いています。今朝のコラムでも通用しそうなフレーズですね。

 諏訪さん自身が厳選した500篇を集めた「諏訪正人の『余録』」(毎日新聞社)諏訪 本.jpg写真㊨=を読みながら、河野編集長は「700字あまりの短い文章ですが、一つひとつに心血が注がれています。書き手が『一日に一つ卵を産むニワトリ』(毎日新聞『記者の目』、2002年6月25日)なら、読み手も一日一話制でいく他ないと悟るのです」と、書き手と読み手の切り結びとでもいうべき関係を説き、新聞1面の記事を「よそ行きの写真」、コラムを「素人が小型カメラであちこちから気楽に撮ったスナップ写真」という諏訪さんのたとえを引き、「重要なのは、想像力。鳥の目となって空高くから見下ろすのも、虫の目となって地べたから仰ぎ見るのも、すべて想像力の所産だというわけです」と解説します。その流れで、諏訪さんの代表作として、パレスサイドビルの鳩の話を選んだのは、想像力の「鳥の目」に通じるということか、と想像します。

 河野編集長はコラムを次の言葉で締めています。

 「流されゆく日々との『その日暮らし』に別れを告げて、『余録』はいま一冊の書物としてわれわれの前にあります。洗練されたユーモア、行間ににじむ教養、悠然たる構えに秘められた記者魂――。『眇(びょう)たる数百字のコラム一つで愉快になって元気が出る。生きる勇気が何となく湧いてくる。毎日新聞の読者なら覚えがあるはずだ』とは、愛読者の一人だった丸谷才一さんが、諏訪さんの『余録』を評した言葉です。」

 季刊誌「考える人」は2002年創刊。初代編集長のインタビューによると、産業革命後のイギリスで、急速な都市化が進むなか、「plain living,high thinking(シンプルな暮らし、自分の頭で考える力)」の必要性を説いた詩人、ワーズワースの言葉を頼りに「溢れる情報のなかで自分の頭で考える力を問い、溢れるモノのなかでのシンプルな暮らしを考えてみたい」というのが創刊のコンセプトとのこと。

 なお、鳩についてはパレスサイドビルのホームページでも次のように説明を載せています。(https://www.mai-b.co.jp/about/story.html

 「ビル屋上の片隅に向けると、羽を休め、また飛び立とうとしているアルミブロンズのハトがとまっているのに気づかれるでしょう。ビル設計者はかつて新聞社が 原稿を運ぶ手段として利用していた伝書鳩を平和のシンボルとして、現在も毎日新聞社が入る当ビルに意匠的な遊び心で置いたのです。作者は一色邦彦氏で、ビル建設当時に彫刻の高村光太郎賞を受賞、その後多くの各種受賞作品を制作しています。」

諏訪 余録19841014.jpg

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