【2014年6月30日】のアーカイブ

 竹橋近く、皇居(江戸城)の平川濠の石垣にへばりつくようにして、石の隙間に芽吹いた植物を取り除く作業風景を、先日紹介しました。いつもは何気に眺めて通るだけに石垣ですが、久しぶりにジッと見たので、その美しさに改めて感心し、石垣について調べてみましたら、、時代や場所、その他によりかなりバリエーションがあるんですネ。戦国時代には築城名人とされる武将がいたとか、江戸の太平の世になると防御の実質より見かけ重視になるとか、なかなかに奥深いんようです。

 ということで、その報告。まず、基礎知識として、分類から。

 石の形、加工の仕方、つまり、そのまま積むか、加工して積むか、また、加工の程度は、という点での分類です。これは、加工技術の進歩の順番で、①野面積み(のづらづみ)、②打込接ぎ(うちこみはぎ)、③切込接ぎ(きりこみはぎ)の3種類。ちなみに、「接ぎ」は「つなぎ合わせる」という意味です。

 野面積みは自然石をそのまま積み上げる手法で、城の石垣としては比較的初期の時代(戦国~安土桃山時代)のものが多いようです。平らな部分が表になるように意識して積んだものもみられますが、基本的に石の大きさや形はバラバラ。隙間や出っ張りもたくさんあり、隙間に小石を詰めて強度を高めています。一見、適当に積み上げられ不安定に見える野面積みですが、何百年も崩れないものも多いです。石積みは、裏側にある土砂や、雨が浸透した場合の水圧に耐えなければなりませんが、隙間だらけの野面積みは水を自然に排出するので、意外に頑丈ってわけです。

 打込接ぎは、石の角や面をたたき、なるべく平たくし、石と石の接合面の隙間を減らして積み上げます。関ヶ原の戦い(1600年)の後、西軍大名の領地が召し上げられ、東軍の武将に褒美として配分され、築城ラッシュが起こったのですが、ちょうどこの頃が打込接ぎのピークだそうです。この石の加工・積み上げは"ハイテク"というわけではなく、飛鳥時代以降、技術は十分に培われ、例えば世界最古の木造建築である法隆寺五重塔や金堂でも正確に加工された石材が使われています。それが、関ヶ原後に広がったのは、効率上の要請。その辺の石を大小組み合わせて積み上げる野面積みは、限られたエリアであれば手軽で短期間に完成できますが、大量の石材を必要とする場合は、自然石を拾い集めるより、岩山から石材を切り出し、部材ごとに予め決めておいた大きさに加工する方が、現場作業を単純化して効率をアップできる道理。まさに築城ラッシュが故の大量生産向きというわけです。

 最後に、切込接ぎは徹底的に石を加工して隙間なく積み上げる手法です。ブロック塀のように同サイズではありませんが、それなりに大きさも揃えます。わざわざ排水口が設けられているのが特徴。1615年の大坂夏の陣で豊臣氏が滅亡し、日本国中で徳川幕府に逆らうものはいなくなり、一国一城令で各大名の居城以外の城は取り壊され、武家諸法度で城の改修も自由にできなくなると、防御としての城の存在意義はガタ落ち。権威の象徴の趣が強まるとともに、石垣も見せるための芸術性を求められるようになり、切込接ぎの時代になったのです。ただ、大規模な築城が行われなくなって石を積む機会が減少したため、元禄・宝永期(1700年頃)をピークに石垣を積む技術は退化しはじめたといいます。

 積み方による分類もあり○石垣6分類.jpgます。「布積み」は石と石の継ぎ目が横に一直線になるように(目地を通すように)積み上げる方法で、綺麗ですが強度にやや問題あり。これに対して「乱積み」は目地にこだわらず不規則に積み上げる方法で、こちらの方が難しい「職人技」です。

 これら、加工の3分類と、積み方の2分類を組み合わせて、2×3の6通りで、概ね石垣を分類できます=写真㊨はあるホームページの分類表。

 ほかに「石垣の外観による分類」という言い方もします。「算木積み」は、石垣の角を、細長い石を長短交互に整然と積み上げ、強度を高める積み方です。谷積みは布積みを45度傾け斜めに組む手法で、現代でも道路工事などで使われています。石材を六角形に加工して積み上げる切込接ぎの一種「亀甲積み」もあります。

 一番上の写真は金沢城の石川門の石垣ですが、左右で積み方が異なるのがわかりますネ。左が打込接ぎ、右が切込接ぎで、傍らの説明プレートによると、「明和2(1765)年の改修時のものと考えられている」とありますが、なぜこうなったかは書いてありません。左側は昔のままで、右側だけ綺麗に組み直したのか○DSC_2656石垣2囲み.jpgな、などといろいろ想像しちゃいます。

 江戸城にはいろいろな石垣が見られるので、改めて紹介しますが、写真㊧の平川濠のように、濠のところの石垣は概ね打込接ぎのようです。そして、丸囲いの部分は典型的な「算木積み」。角はこうしないと弱いんでしょう。

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