【2013年4月11日】のアーカイブ

 東京・渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで開かれている「ルーベンス 栄光のアントワープ工房と原点のイタリア」展(毎日新聞社など主催、21日まで期間中無休)では、音声ガイドを俳優の谷原章介さんが務めています。谷原さんのルーベンス展見聞特集が4月6日の毎日新聞に載っていて=写真㊤、ルーベンスに触れた記憶として、谷原さんも「フランダースの犬」を挙げていました。

 「フランダースの犬」の原作はイギリスの作家ウィーダが19世紀に書いた児童文学。日本では1908(明治41)年に翻訳されて初めて出版され、日本人になじみやすいよう、ネロは「清(きよし)」、パトラッシュは「斑(ぶち)」と日本名に変えられていました。時代ですね。以後、幾多の本、絵本が出されています。

 地元ベルギーでも出版されていますが、あまり有名ではなく、評価も日本とは対照的だそうです。「Excite News」(2007年5月10日)によると、「ベルギーの方たちは『子供一人を空腹で亡くすような残酷なことを私たちは決してしない』といった批判的な意見さえある」ということです。ネロが農場の旦那に娘のアロアと親しくすることを禁じられ、風車の火事で濡れ衣を着せられ、最後に旦那は落とした全財産の入った手提げをネロが拾って届けてくれたことから改心しますが、時すでに遅し......。そんなストーリーを、地元のフランダースの人々が面白く思わないのは理解できなくはありません。

 司馬遼太郎は「街道を行く35 オランダ紀行」で「フランダースの犬」を論じていて、大阪府立国際児童文学館の横川寿美子氏の「十五(歳)にもなっているのに、なぜ雄々しく自分の人生を切りひらこうとしなかったか」という分析を紹介しています。これも一つの見方です。ネロの年齢はアニメで10歳、原作は15歳。これが決定的な違いでしょう。

 ということで、現地にモニュメントのようなものはなかったのですが、日本人観光客が訪れては話題にしたからでしょうか、1986年に、物語の舞台とされるアントワープ近郊の村ホーボケンにネロとパトラッシュの銅像=写真㊦㊧=が建てられ、2003年にはアントワープ・ノートルダム大聖堂前の広場に日本語の記念碑=写真㊦㊨=が設置されました。なお、現地で「フランダースの犬」の物語の普及に尽力した人の取り組みなどを含め、この物語については、ベルギーの国際非営利団体「『フランダースの犬』情報センター」のサイト(http://www.a-dog-of-flanders.org/1-3-1.html)に詳しいです。

 

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