2013

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ぶらパレス 2・26事件PART7 株で大儲け

 世の中、アベノミクスの株高で賑やかですが、古来、市場では時々の空気をどう読めば儲けるか、日々熾烈な頭脳戦が繰り広げられます。天変地異や戦争などは、中でも相場を大きく動かす極めつけの材料です。

 本日は1936年の2・26事件から77年。事件について当ブログで何回か書いてきました。昨年12月6日に、事件当日に山種証券(現在はSMBCフレンド証券)創業者の山崎種二(1893~1983年)が竹橋を通りがかったことを紹介し、1月10日に事件に伴う株暴落の話を書きましたが、今回はその続き。

 鹿島建設のホームページに、山崎が2・26事件で大儲けした逸話が紹介されています(http://www.kajima.co.jp/gallery/kiseki/kiseki18/kobore18.html)。

 「(山崎は)226日朝7時過ぎに新築したばかりの麹町三番町の自宅で事件を知った。そこへ新潟の長距離電話が繋がったとの知らせが入る。当時長距離電話は事前申し込みが必要で、たまたま別件で前日に予約をしていた電話だった。新潟取引所の立会開始は東京より10分早い。事件の詳細は不明のまま、次々と成行(なりゆき)売注文を出した。......社に着いたのはいつもより遅かったが、まだ場は立っていなかった。東京の取引所では結局立会停止、各地の取引所も同時に立会停止となった。しかしこの時点で山崎が新潟で出していた巨大な売り注文は、取引が成立していた。株式市場の再開は事件から13日後の310日。売り一色の中、山崎は買いまくった......

 事件で株の暴落は必至と見て新潟で売りまくり、それ以前のカラ売り残も含め、取引再開後、株がショック状態でドーンと値下がりしたところを安値で買い戻し、さらに安く買いあさり、その後の相場の戻ったところで売り抜け、ガッポリ儲けたというわけです。

 実はこの時、山崎は苦境に陥っていました。前年、42歳で当時としては珍しい5階建て、花崗岩や大理石をふんだんに使い、東京でも2番目の自動エレベーターを備えた本社ビルを完工する一方、高級住宅地の麹町には総檜造りの豪邸を新築し、飛ぶ鳥を落とす勢いでした。当時、山崎は「売り将軍」と呼ばれ、先行き値下がりすると見込んだ株を空売りする「売り方」に回っていたのですが、2・26の前年10月、イタリアがエチオピアに侵攻すると、相場は一段と高騰し、年が明けても騰勢は衰えず、「戦争は買い」と市場は強気一辺倒。巨大なカラ売りの残高を抱えた山崎は、追証(おいしょう=空売りするための証拠金が株価上昇で不足し、追加を求められる事)が発生して資金も尽き、ついに腹をくくり、カラ売りした分の買戻し(損切り)を覚悟した――まさにそのタイミングで2・26事件が起き、息を吹き返したわけです。このときの儲けは500万円にも達したといいます。今の価値では50億円を超えるでしょうか。あまりのタイミングのよさに「山崎は2・26事件を起こした反乱軍と内通していたのではないか」との疑いをかけられ、一時連行されたというおまけつきです。

 米問屋の丁稚から成りあがった山崎は伝説の相場師として有名で、このほかにも逸話に事欠きませんが、それはまた機会があれば書きましょう。(写真は自伝「そろばん」)

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