東京・有楽町にあった毎日新聞社の前身、東京日日新聞社のビル、東日会館の東日天文館に設置された東日本で最初のプラネタリウムのパンフレットを送ってくれたアマチュア天文家、小川誠治さんから今度は天文館みやげとして売られていた絵葉書のコピーが送られてきました。これもまたまた貴重な資料です。
「天界五景」と題した絵葉書は5枚組で20銭。おおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、オリオン座のベテルギウスで構成する冬の大三角と皆既日食をイメージさせるイラストが描かれた封筒に入れられていました。5枚とも手書きの絵で「極光 オーロラ」「光冠 コロナ」「月世界より見た日食」「月世界から見た地球」「大彗星」とのタイトルがついています。
このうち「大彗星」は1843(天保14)年2月初めに現れた大彗星を描いたもので「北欧の空に現れて当時の人心を恐怖せしめたもの。尾の長さ六十度周期5百年」という解説がついています。
絵葉書では北欧で見られたものを絵にしていますが、この大彗星は日本でも観測された記録が残っています。2月下旬には昼間でも簡単に見えるようになり、マイナス6等星以上の明るさで3月中はずっと目立っていましたが、4月になって少しずつ暗くなり、同月20日に観測されて以降見えなくなったということです。
尾は1億5000万㎞と、地球の周りの3750倍、光が届くのに約8分強かかるという想像を絶する流さで、1996年1月に鹿児島県のアマチュア天文家、百武裕司氏が百武彗星を発見するまでは記録上最も彗星の長い尾だったのです。当時の人たちはこの長い尾を引く大彗星に恐れおののき、「最後の審判の日」が差し迫っているのではないか、という話が流布したとの記録も残っています。