かなり冷え込んできて、晩秋というより冬に入った感じです。東京・竹橋のパレスサイドビルすぐ前にある皇居東御苑の木々や草花は秋から冬の装いに変わってきています。冬の地味な彩の中にあってセンリョウ(千両)、マンリョウ(万両)がひときわ目立つ赤い実をたくさんつけて鳥たちを誘っています。
葉っぱの上に実を付けるのがセンリョウ、葉の下に垂れ下がるようにして実がなるのがマンリョウ。やはり葉の上の実の方が鳥たちに狙われやすく、早く食べられていくようです。
マンリョウ、センリョウだけでなく、ヒャクリョウ(百両)、ジュウリョウ(十両)、イチリョウ(一両)という木も同じように赤い小さな実を付け、似ていますが、実が多く重そうに見えるほうから順番にその名前がついたといわれています。
マンリョウ、センリョウともに縁起のいい名前がついていることもあって正月の飾り物には欠かせない木になっています。関西地方では、葉の付け根に鋭いトゲがあり、蟻のような小さい虫しか通さないということからアリドオシ(蟻通し)という別名がついたイチリョウを加えて「万両、千両、(一年中)有り通し」として縁起物にもなっています。
ジュウリョウは別名、ヤブコウジ(藪柑子)。センリョウをのぞく上記の4種はいずれもヤブコウジ科です。「ヤブコウジ」と聞いて思いつくことはありませんか?
そう、落語の「寿限無」で、「寿限無 寿限無 五劫の摺り切れ~~」という子供の名前の中に入っている一節です。名付けのアドバイスをした和尚さんは「藪柑子という何とも丈夫な木があって、春は若葉を生じ、夏に花が咲き、秋に実を結び、冬は赤い色をそえて霜雪をしのぐというめでたい木じゃ」と解説しています。そうと知ると、余計に縁起がいいものに見えてきますね。