朝倉文夫(1883~1964年)の続きの話。
早稲田大学の大隈重信像が朝倉作品だと書いたら、「慶応にもあるぞ」という声が聞こえてきました。
と言っても、福沢諭吉像ではありません。慶応大学三田キャンパスの「平和来(へいわ きたる)」=写真㊤=が、塾監局という慶応義塾の中枢の建物の前庭にデーンと据えられています。名前からも想像できるように、戦没した慶応義塾員(学生、卒業生ら)に捧げるもので、1932(昭和7)年卒業生有志が、卒業25周年記念として1957年に寄贈したそうです。台座には「丘の上の平和なる日々に 征きて還らぬ人々を思ふ」という小泉信三・元塾長の碑文が刻まれ、また近くに「還らざる学友の碑」も1998年建立されました。
朝倉作品が三田キャンパスにもう1点あります。旧図書館の東側、「文学の丘」に建つ「小山内薫胸像」=写真㊦。築地小劇場を興し日本における新劇の父として知られる小山内は一高、東大出身。その胸像が三田の丘に建つまでの経緯が、慶応義塾のホームページに紹介されています。それによると、1910(明治43)年、慶応の文学科の講師として迎えられたのがそもそもの縁。築地小劇場の発足も、1カ月前、1924(大正13)年5月20日、慶応大学演劇研究会主催の三田大ホールでの講演が発端となったと書かれています。胸像は、1958(昭和33)年、没後30年を記念して、友人門弟らが朝倉に依頼して作り、1964年に別の場所から三田に移されました。
竹橋から三田キャンパスへは、神保町まで5分歩いて、都営三田線に10分余り揺られた後、歩いて7、8分です。