緑色の葉っぱの真ん中にちょこんと乗った小さな粒――。これ、何だかわかりますか? そう、ハナイカダですね。
パレスサイドビルすぐ前の皇居東御苑内の富士見櫓近くで、今まさに咲こうとしています。これから白い花を開き、夏には黒紫色の実になります。
花といえば茎から咲くのがほとんどですが、これは葉の真ん中に花や実がつく面白い種類です。葉っぱを筏に、花や実を人に見立ててその名がついたそうです。学名はHelwingia japonica(ヘルウィンジア ジャポニカ)と、これまた"ジャポニカ"がつきます。
「ままっこ」「ヨメノナミダ」と面白い別名もついています。「ままっこ」といっても、母親べったりの「ママっこ」からついたわけではありません。若葉をご飯に炊き込んで「菜飯」の材料にするところから「飯子(ままっこ)」といわれるようになったそうです。
「ヨメノナミダ」は姑のいじめや夫のDVにあった嫁が流した涙が葉っぱの上に落ちたことから付いたのかと考えましたが、どうやらそうではなさそうです。
その昔、殿様の使いの者から「葉に実のなる木を見つけてこい」と命じられた若いお嫁さんが、夜遅くまで山中を必死に探したもののどうしても見つかりませんでした。その悔しさから流した涙の一粒が足元に落ちて、木の葉の真ん中で月の光に照らされて真珠のように輝いた、という民話から由来したようです。俗名といい、別名といい、何とも趣と味わい深いネーミングですね。